建築物省エネ法の改正
政府は2019年2月15日、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。
法案の主なポイントとして以下が挙げられます。
①2020年までに予定されていた一般住宅への省エネ基準適合の義務化が見送られた。
②建築主への省エネ基準への適合の説明が義務化された。
これにより、私ども住宅建築に携わる事業者は新たな取り組みが求められています。
また施主様においても、家の将来的な資産価値を考えた家のあり方と、2019年10月の消費税増税を踏まえた新築やリフォームについて注意する必要があります。
清建では、常に最新の省エネ基準を修得しており、皆さまの疑問にお応えして参りますので、お気軽にご相談下さい。
(ナイスビジネスレポート 20190315発行より抜粋)
※建築物省エネ法の改正の概要は、以下をご覧ください。
建築物省エネ法を改正
政府は2月15日、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。
これは、パリ協定の目標達成に向け、住宅・建築物のエネルギー対策を強化するもので、住宅・建築物の規模・用途ごとの特性に応じた実効性の高い総合的な対策が盛り込まれています。
今回の法案では、建築物をオフィスビル等、マンション等、一戸建住宅等のセグメントに分け、それぞれ対策が講じられています(図1)。
政府は、建築物の特性を踏まえた総合的な枠組みの構築と省エネ対策の強化を通じて、住宅・建築物の省エネ性能の向上を図り、持続的な経済成長及び地球温暖化対策に寄与するとしています。
具体的には、一戸建住宅に対しては、設計者である建築士から建築主に対して省エネ性能に関する説明を義務化する制度を創設することで、省エネ基準への適合が推進されています。
更に、大手ハウスメーカー等が供給する住宅に対し住宅トップランナー基準への適合を徹底するとともに、これまでの建売住宅に加え、注文戸建住宅と賃貸アパートを供給する大手住宅事業者が同基準の対象に追加されます。
そのほか、オフィスビル等に対して、省エネ基準への適合を建築確認の要件とする建築物の対象を、現行の延べ面積2,000㎡以上から、300㎡以上と下限を拡大します。
マンション等については、所管行政庁による計画の審査を合理化し、省エネ基準に適合しない新築等の計画に対する監督体制を強化することで、省エネ基準への適合の徹底が図られます。
国土交通省「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定
http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000846.html
建築主への説明を義務化
今回の法案では、国土交通省の社会資本整備審議会において議論されていた(2018年11月15日号で既報)、延べ面積300㎡未満の小規模住宅への省エネ基準適合義務化は見送られ、設計者である建築士から建築主に対して省エネ性能に関する説明を義務化する制度が創設されました。
同審議会が1月末に公表した「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について」と題した答申では、一般的な一戸建住宅などについて省エネに関し専門的な知識を持たない個人が建築主であることが多く、また、省エネ計算が行われず建築主に省エネ性能に関する情報が十分に提供されていないことから、建築主が住宅の省エネ性能について十分に理解していない場合が多いとしています。一方で、省エネ性能に対する情報が提供されれば、建築主が省エネ性能の高い住宅を選択する蓋然性が高まるとしています。
こうした状況を踏まえ、省エネ基準への適合を促進する上で建築主の行動を変化させるために、省エネ基準への適否等を設計段階から建築主に確実に提供することが有効だと結論付けています。
更に、この新制度の運用に当たり、設計終了時に建築士が省エネ基準への適否等を記載した書面を交付するなど、建築士による適切な説明を徹底するために必要な措置を講じるとともに、省エネ性能を向上させるための措置を提案するよう、建築士に促すとしています。その上で、中小の工務店や設計事務所を含め、すべての事業者の省エネ基準等への習熟が必要であり、基準等の大幅な簡素化について検討される予定です。
住宅トップランナー制度を拡大
年間150戸以上の分譲住宅を供給する大手の住宅事業建築主を対象とした、高い省エネ性能を有する新築住宅の供給を促進する住宅トップランナー制度が、注文戸建住宅と賃貸住宅にも拡大されます。同審議会によれば、住宅事業者のうち、注文戸建住宅や賃貸アパートの建築を大量に請け負うものは、大手の住宅事業建築主と同様、断熱材や窓といった省エネ性能に影響を与える建材の標準仕様の設定などを通じて、住宅の省エネ性能の決定に大きな役割を果たし、その取り組みが新築住宅全体の省エネ性能の向上に寄与しています。こうした状況を受け、注文戸建住宅や賃貸アパートの建築を大量に請け負う住宅事業者を住宅トップランナー制度の対象に追加し、今後、供給する住宅の省エネ性能の実態等を踏まえた適切な基準を設定し、普及促進を図るとしています。
住宅の質が求められる時代へ
同審議会は、政府は省エネ技術の浸透に注力しているものの、中小の工務店の約半数は省エネ計算ができず、規模が小さい事業者ほどその傾向が強まるとしています。2016年度において、年間着工戸数4戸以下の事業者が供給する住宅の省エネ基準適合率は44%と、大手事業者と比較して半分程度の水準となっており、省エネ技術の習熟が求められています。
(独)住宅金融支援機構が昨年に一般消費者に行った調査では、56.9%が住宅事業者選びで「建物の性能」を重視するとの回答もあり、省エネ性能が高い住宅が求められていく傾向にあります。新設住宅着工戸数が将来的に減少していく中、住宅の質を高め、そのことをしっかりと伝える術を持つことが、お客様から選ばれるための大きな武器の一つになると言えそうです。